面白すぎた!
主人公がもう滅茶苦茶やります。でも物語としてはスマートで、爽快感のある読後です。
凄腕弁理士の大鳳未来が特許にまつわるイザコザをあらゆる手段で解決していくというのが大筋ですが、その解決方法のスマートさに驚きます。自分なりに事件の解決法や落としどころを考えながら読み進めましたが、まったく予想外で「なるほど!」と思わせる結末にただただ感銘を受けました。大賞受賞作品は伊達じゃないなと思いました。
リーガルサスペンスでもありミステリー作品でもあるのが面白く、主人公がプレイヤーたちの思惑を推理し、イザコザの全体像を解き明かしていく過程は謎解きそのもの。核心を暴くワクワク感もありましたが、私はその舞台設定の巧妙さに感心しきりでした。
VTuber事務所がクライアントというのは非常に今時でキャッチーな舞台設定ですが、VTuberだからこその特殊な事情が綺麗に物語に織り込まれており、法律もYouTubeも素人知識な筆者ながらに、非常に高いレベルの理解で書かれた作品だと感じました。
約250ページほどの読みやすいサイズで、話の構成自体はシンプルでスピード感があったのも良かったです。3時間ほどで気持ちよく読み切ることができました。特許問題という小難しい問題を扱っていますが、小説としては決して小難しかったり読みにくいわけではありません。専門知識皆無の筆者でもストレスなく楽しめました。
巻末には当作品が大賞を受賞した『このミステリーがすごい!』の選評が載っており、元々は『バーチャリティ・フォール』という題名だったことや、修正可能ではあるがいくつか問題点があったこと、最後まで専門用語が分からなかったという評価などが載せられています。きっと、バーチャリティ・フォールから特許やぶりの女王へと変わる過程で、そのあたりの問題点はすべてクリアされたのでしょう。
舞台設定の面白さ、それを活かしきったストーリー、小難しい話題なのにストレスや違和感のない文章。それらから読後に感じた作品としての完成度の高さ。 本当に心の底からオススメできる一冊でした。キャッチーな題材でキャラクターも魅力的なので、そのうちドラマ化か映画化はされるだろうなと予想しています。
オススメ度:★★★★★