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黒牢城

黒牢城 (角川書店単行本)

援軍を待つための長い籠城戦の最中、次々と起こる不可解な事件に頭を悩ませる城主の荒木村重と、その荒木村重と敵対する黒田官兵衛が安楽椅子探偵の役回りをするという面白い構図のミステリー時代小説。

使者としてやってきた黒田官兵衛を、戦国時代の作法では殺すか返すかしなければいけないところで「捕らえる」という選択をしたことにより「因果が巡る」というフラグを序章で立てられるわけですが、話が進むにつれて本当に因果が巡っていきます。
読みながら勝手に「巡ってきたな、因果・・・」とニヤついてました。

短めの序章と終章を除くと、全部で4章あり、1章の中で事件が起きて解決までいくという1話完結の構成になっています。1章を読むのに大体2時間ほどかかりました。
ボリュームはありますが、事件の発生、調査、安楽椅子探偵の介入、謎解きというフェイズの移行はスムーズです。1日1章くらい読んでいくと丁度良いのではないでしょうか。

各章で起こるミステリーの謎はそれぞれ深いので、読んでいる最中は誰がどうやって犯行を成し遂げたのかは検討もつきませんでした。 また、種明かしの段になって初めて分かる情報等もあるので、結末を予想して楽しむというよりは、不可解な状況に一本筋が通っていく過程を楽しんで読むタイプの作品だったのかなと感じました。

戦国時代という舞台設定は、そもそも何故事件を解決しなければいけないのかという動機や、何故どうやってそんな犯行を犯したのかという動機に大いに生かされていて、種明かしはなるほどそうかと関心しながら読んでいました。

ただ、時代小説ということもあり、私にはちょっと読むのが難しい本でもありました。 文章が読みにくいわけではないのですが、そもそも単語の意味が分からなかったり、種明かしの段を読んでいても犯行現場の位置関係を正確に想像できないまま読んでしまったりしたので、かなりミステリー小説や時代小説に慣れ親しんでいる上級者向けの本のような気がしました。

読後感としては、すごいミステリーだったというよりは、黒田官兵衛の深謀遠慮がヤバかったなという感想なので、個人的にはミステリー小説というより時代小説を読んだような気分です。いくつも賞を取るだけあって、よく考えられたストーリーと、時代小説らしい言葉で質の高い文章が書かれた、なんというか格式の高い書籍だったと思います。

個人的にはミステリー好きな方には勧めにくいですが、時代小説好きな方になら勧められるかな、という感じの作品でした。

オススメ度:★★☆☆☆